japanese.china.org.cn | 19.09.2016

世界を視野に、広い視点の対話を望む

タグ: 日中関係,東京—北京フォーラム

文=宮本アジア研究所代表 元駐中国特命全権大使 宮本雄二

 

関係改善は何よりも優先すべき

 私は、日本と中国がもっと冷静に、それぞれの国にとって何が必要なのかを考えれば、両国が衝突をしたり緊張関係を強めたりすることにはならないだろうという信念を持っている。したがって、より多くの人が一刻も早くそれを判断し、今の緊張状態を一刻も早く緩和することで、両国関係を本来あるべき関係に戻すべきだと感じている。この考えを日中両国民に説明すれば、必ずや支持されると確信する。

両国の未来については決して悲観していないが、現状に関して言えば、両国政府は一刻も早く状況を改善するよう、努力を倍加すべきである。私自身の外交官としてさまざまな経験を経たなかで得た信念は「あらゆる問題は必ず解決できる」ということだった。どのようなことでも一生懸命でことにあたれば、必ず解決できるものだと私は信じている。

 両国間の関係改善の解決策については、お互いの国益として譲れないものは何かを考えれば、自然に見えてくると思っている。例えば最近の海洋問題における緊張状態にしてもそうだ。本当に日中関係を犠牲にしてもいいほどの大切なものなのかを、お互いに再考すべきだろう。問題の重要性は十分に理解できるが、日中関係の改善のほうがさらに大切だということに思い至れば、目前に横たわっている問題への対応も自然と出てくるはずである。これにはやはり、両国の社会全体が理性的な人々の意見にもっと耳を傾けることが必要となってくる。

今こそ必要な国民の相互理解

 今のような状態において現状を打開するためにやれることというのは、実は多くない。ただ確実にやらなければいけないのは、両国政府が現状を凍結し、互いに今の状況を動かさないことと、現状に合意することである。ただし合意は相手の行動を支持するということではなく、「凍結した時点以上の行動を取らない」という意味である。そして凍結することで時間を稼ぎ、その間に問題解決のためにはどうすれば良いかを考え、解決の糸口を探れば良い。とにかく現在起こっている諸問題に関しては、「現状凍結のあとに話し合い開始」という手順が必要だと感じている。

 国と国との関係は、国民同士の関係にも影響を及ぼす。日本の首相も中国の国家主席も、時が経てば変わるものだが、その後も国民は存在し続けるからだ。したがって日中関係が難しい局面にある今だからこそ、日中両国民が直接触れ合うことによって「等身大」、つまりありのままの相手を理解し、ありのままの相手と仲良くやっていけるかを、よくよく思考するべきなのだと思う。

私は「日本人と中国人は友人になり得る」と結論づけている。これは長い時間をかけ、多くの中国の人々と付き合いをしてきた経験上、100%の自信を持って言えることである。

 

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