japanese.china.org.cn | 14.09.2015

中国で働く日本人:「洗練された東アジア文化」構築を望む

タグ: 東アジア文化,グローバル化,伝統文化

榎本雄二

筆者は現在、雲南省・昆明の企業でインテリアデザインの仕事をしている。

「日本の禅スタイルでデザインしてほしい」。

最近、そんな要望のクライアントが増えてきた。あるクライアントは自社オフィスの屋上に日本の枯山水を作って欲しいとさえ言う。5年前には考えられなかったことだ。どうしてこのような傾向が生じているのだろうか。

実のところ、彼らは日本文化が好きだからそう言っているわけではない。屋上に枯山水を作って欲しいと言ったクライアントは宝石会社の経営者で、禅宗を信心している。だからオフィスのデザインを通じて自分の信念を表現し、従業員や顧客に伝えたいと考えた。その際、その表現方法は中国の禅よりも日本の禅のほうがいいと彼は思った。

なぜなら日本の禅は「シンプル」に通じるからだ。禅は中国で生まれた大乗仏教の流派である。日本の禅は、中国から伝わったものが分派的に発展したものである。現在、中国の禅と日本のそれでは様式や文脈が異なる。禅といえば石と砂で作られた庭園「枯山水」が特に名高いが、中国の禅寺に行っても枯山水はないし、「わび・さび」もない。日本の禅には、西洋モダニズムに通じる抽象的な簡潔性がある。

そして現在、中国ではシンプルなデザインが主流になりつつある。中国では2008年の金融危機をきっかけに大型景気刺激対策が行われ、そこから大量の「土豪」と呼ばれる成金が生まれた。土豪は極端な派手好みで、やがてそれに対する冷笑が生まれた。同時に成金趣味の正反対の意味を持つ「低調」と呼ばれる控えめのスタイルが一部で流行した。

そこにアップル社製品のブームが到来する。製品のみならず、そのOSや広告、店舗の持つシンプルさとスマートさが中産階級の人々の心を大いに捉えた。すると、“「低調」とはシンプルさと同義である”という共通認識が彼らの間で広まった。中国においてスマホのシェアはアンドロイド系のほうが上だが、飛行機に搭乗している人々を眺めれば、iPhoneのほうが明らかに多い。

つまりこのクライアントは、「禅」を通じて自分の信念を表現する際に、中産階級で流行するシンプルでスマートなデザインとの融合を図りたいと考えたのである。結果として作り出されるデザインは、必ずしも日本というアイコンが全面で人々に認識されるわけではない。

1   2   3   4